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暗号資産「ADA(エイダ)コイン」のプレセール(販売)やICOに貢献し、現在、その技術基盤である「CARDANO(カルダノ)」の商業化部門として全世界で教育や投資活動を展開する「EMURGO(エマーゴ)」の日本人CEO 児玉健氏に話を聞いた。
「ADA(エイダ)コイン」の時価総額は、記事執筆時点で世界12位に付けている。また、CARDANOはブロックチェーン技術領域において最も意欲的に開発していると評価されており、その商業科部門であるEMURGOはアジア圏でその導入や事業化で着実に成果を出しており目が離せない状況だ。
「ADA(エイダ)コイン」販売の問題点とは
2017年から2018年にかけての取引価格高騰が記憶に新しい暗号資産(仮想通貨)。それまでの数年間、そして現在に至るまで、法整備などが行き届かない暗号資産の取引には、さまざまな風評にさらされがちだ。
とにかく説明会などを開催するだけ疑問の目でみられ「儲かる」と発言すれば詐欺扱い。業界の有名人までもが「マルチ商法と酷似している」など、多くのプロジェクトを一方的に批判した。ほとんどが憶測や事実のない風評だっただが、実際に詐欺が疑われる取引も発生していたのは事実であり、また株式取引のような不正行為を防ぐ法律や仕組みや存在しておらず、問題視するのも当然ともいえた。
「ADA(エイダ)コイン」も日本では最も注目されたプロジェクトのひとつといっても過言ではない。2015年9月から2017年1月までの間、日本を含めたアジアエリアを中心に行われたエイダコインの販売で獲得したのは約6200万ドル。購入した約1万4000人のほとんどが日本からのお金だったという。当時、販売ネットワークを主導した児玉健氏は「元々FP(フィナンシャルプランナー)として暗号資産の可能性にかなり期待していた。まだ未成熟な市場ですから、本人確認を徹底したり、販売国を制限したり、高齢者への説明する取り組みなども整えるなど新しい取り組みをしていった。しかし、新しい層を獲得するためにの販売パートナー拡大にあたり管理が不十分だったのは否めない」と発言する。
実際、「ADA(エイダ)コイン」の販売網について多くのメディアが調査報道を行い「問題は否めない」といった趣旨の記事を公開している。「マルチだ」といわれても仕方ない構造といえる。ICO後も価値が高まり、相当な利益を得たとみられており、現在もその問題を検証する動きはあるが、エイダコインの市場価値が高まり、EMURGOとしての活動が拡大するにつれ、焦点はその後の事業可能性にシフトしつつあるように筆者は考えている。
「ADAコイン」の展開基盤であるCARDANOはイーサリアムの元開発者が生んでいる
そもそも、EMURGO代表取締役の児玉健氏は、「ADA(エイダ)コイン」の基盤であるCARDANOプロジェクトの共同創業者として名を連ねている。プロジェクトリーダーは、今や暗号資産の取引量で世界トップ3を締めるイーサリウムの元開発者であるチャールズ・ホスキンソン氏だ。
共通の知人経由で児玉氏とチャールズ氏が対面。「新たな経済圏を作っていこう」と意気統合し、2015年2月にプロジェクト創設に合意。
「そのためにやるべきことは山ほどある、広げるためのことをしていかなくてはならないし、コミュニティも形成しないといけない、政府に対する働きかけなどとても1社でこなせる話ではない。ということで、3つの組織を作り、それぞれの役割を果たしていくという構想を考えたんです」(児玉氏)
・CARDANO財団・・・ADAコミュニティ管理・開発母体IOHKの監査・ADAプレセール(コンプライアンス、数字のチェック等)・EMURGOがADAのために活動をしているかといった中立的な判断をする。
・IOHK・・・基礎技術の開発・論文の発表(さまざまなブロックチェーンを含め何が問題になりどう解決できるか研究し論文として発表・議論を展開していく)。
・EMURGO・・・一般の消費者にその利点を伝える取り組みとして実際のビジネス開発。教育や投資活動。
この構想は2015年3月にスタート。「学術的な裏付けをしながら、ブロックチェーンを筆頭とした根底となる基礎技術も独自に開発し、かつ事業として展開していく」。この3つの組織体を現在も活動している。
日本発、世界で活動する「EMURGO(エマーゴ)」
CARDANOの事業を展開するため、2015年に日本で生まれたEMURGO(エマーゴ)。
CARDANOの開発が進み、ADAコインの送金がスタートできたタイミング2017年6月に法人化を果たし、現在はインド・インドネシアに子会社があり、日本を中心に10か国50人のメンバーが以下の事業ドメインで急拡大中だ。
1. コンサルティング
すでに4社のコンサルティング案件が進行中で、まもなく結果が出てくる段階に至るという。インドネシアではコーヒーのサプライチェーンをブロックチェーン化する取り組みが進んでおり、豆を採取したところからインドネシアの島々を超えた流通までどうトレーサビリティを実現するのか現場を調査し、どう解決するかという一連の作業を進めている。これと並行して不動産関連のプロジェクトもある。ウクライナ政府と憲法のスマートコントラクト化の検討も進んでいるという。
2. ウォレット・ブロックチェーンエクスプローラーの開発
ADAコインを保有するウォレットや、取引台帳であるブロックチェーンをチェックできるツールの開発。
3. ステークプールの管理
ADAコイン/CARDANOのブロックチェーンは、ビットコインなどのようなマイニングと異なり「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」と呼ばれる仕組みが導入されている。一定量のADAコインを保有し続けることによって「ステーキング報酬」が得られる仕組み。この運営管理が始まる予定。
4. 開発支援ツールの提供と教育
CARDANOブロックチェーンの開発言語であるRust・Haskellベースの開発支援ツールの開発。
また、それに伴い、インドで「EMURGO Academy」・インドネシアで教育プログラムを展開。間もなくインドネシアでも展開予定。
5. アクセラレータープログラム「DLab」
2019年2月、子会社を通じ「DLab」としてニューヨークでアクセラレタープログラムを展開。全世界からブロックチェーン・スタートアップを集い、投資・メンタリングを通じて事業成功へと導く取り組みを行っている。
アクセラレーターのパートナーはニューヨークのSOSV社。これまで500億円のアセットを管理し700社に投資。BWMやジョンソン・&・ジョンソンのアクセラレーターを運営したこともある有名VCだ。
「DLab」はCARDANOエコシステム発展に寄与する企業を増やすために投資範囲はキー技術や関連事業に対する投資も行っており、すでに1バッチを終了。170件の応募があった中から4件を採用し投資育成を行っている。
現在2バッチの募集が始まっており、現時点で前回を上回る150件の応募があるという。年間で10件程度の投資を計画しているという。
「EMURGOはやるべき仕事が非常に多岐に渡ります。またビジネスの知識も、開発の知識も必要。各専門分野における世界プロを採用する必要がありました。それぞれのまた基本はリモートワークになるため、採用にはとても気を遣っています。まずあらゆる意味でプロフェッショナルな人しか採用しません。経験が豊富で、ビジネスマンとしてのスキル、そして一人でもミッションを遂行できる人間性。もともと新しい経済圏を作るというプロジェクトなので、見えない壁をどう乗り越えられるか、そういった資質を持った人を集めようとしています」(児玉氏)。
暗号資産における逆風を乗り越えて
CARDANOプロジェクトの成長へのスタートラインは「ADA(エイダ)コインのプレセールにおける目標6000万ドルの達成したこと」にある。
しかし、プロジェクト全体の取り組みが成功したといえるかどうかは、今後、商業化組織EMURGOの取り組みを筆頭に、実社会におけ実行浸透ができるかどうかにかかっているといっても過言ではない。
そのキーマンの一人であるEMURGO 児玉氏は今、どんな覚悟で挑んでいるのだろうか。
「社会課題をCARDANOブロックチェーンで解決することの意義や可能性は大きなものであると感じています。
2017年のICOは、活用する意味が無いようなプロジェクト、つまり資金調達だけの目的に立ち上げられたものが目につきましたが、時間が経つに連れて投資家も本質に気がつくと思うんです。
特に新興国では、投資対効果というコストメリットだけではなく、社会課題をクリアにする可能性があると考えています。
現在取りかかっているプロジェクトは2020年早々に動き始まる様相ですが、まだまだ技術開発はもちろん、政治家に対するロビー活動といったことも必要。ブロックチェーンを活用することで、古い体質を改善し効率化を果たすことができるという期待は間違いなくあると思うのですが、ウェブやスマホ上に留まっている以上は将来は描けない。
実態のある成功事例をどんどん作り、最終的には国家レベルの事例を生み出すことができればやりやすくなるかも知れませんが、実際ブロックチェーンならではの効果が一般に普及するには5年とか7年とかいう時間がかかるように感じます。
いずれは各国で展開した事例を、日本に逆輸入することで、これまでやってきたことが人を裏切るようなことではなかったと理解してもらえるようになったらと思っています」(児玉氏)。
(了)
【関連URL】
・[公式] EMURGO