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株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役
斉藤 徹
世界で最も急成長している企業として知られるGrouponだが、今まではその驚異的成長や共同購入の仕組みにフォーカスされた記事がほとんどだった。
・ 創業2年で売上300億円,利益40億円。”Groupon” 成功の秘密 (5/6)
では、さほど参入障壁が高くない共同購入クーポンのビジネスで、なぜGrouponは突出した業績をあげられるのだろうか?ちなみに前述の筆者記事ではGroupon成長の秘密を次の3点にまとめている。
- リアル店舗の商材を扱っていること
- 徹底的にシンブルなサービスにしていること
- ソーシャルメディアを最大限活用していること
しかしながら、これだけではGroupon独走の説明根拠としては足りないようだ。実は最も重要な差別化要素は企業文化にあるのだ。それを特集したブログ記事(Church of the Customer Blog)をもとに、Grouponの隠れた成功要因を探りたい。競合他社と明らかに異なる、次の9つのポイントがそれを表している。
1. 取引条件の明示
一般的に購入の際の注意、ただし書きのようなものは細かい文字であまり目立たないところに記載するものだ。Grouponでは利用者が絶対に誤解しないようHighlightsよりも目立つ場所に大きな文字で取引条件を明示(上画面の赤丸部分)しており、利用者への誠意が感じられる。
2. すべてのクーポンに電話番号を記載
単なるサイトへの問い合わせだけではない。購入したお店の中からでも、何か問題が発生すればGrouponに電話連絡でき、直ちに解決してくれる。Amazonのカスタマーサービスのようだとブログ筆者はのべている。
3. Grouponメールアラートの配信停止を申し出ると…
こんな画面があらわれる。→ live video feed of Derrick, the Groupon Guy
そののち「Derrickと仲直りしたい?」 というメッセージのあと「再登録」ボタンが!そしてこのDerrickこそ、Groupon CEO, Andrew Mason氏、その人だ(笑)
4. 謝罪は徹底的に
Grouponは良いお店を探すのに狂信的だが、トラブルは皆無ではない。ある時、数百枚ものチケットを販売したあとで問題が発生したときには、「We’re sorry」と書かれたサインをもち全チームを集めて写真を撮った。その後、購入した利用者に返金するとともにこの写真を添えて謝意を表した。
5. 鉄壁の保証「Grouponの約束」
Grouponの体験に満足できない利用者にはクーポン利用後でもお金を返金するという、Zapposを上回る保証を提供している。彼らはこれを「Grouponの約束」 (The Groupon Promise)と呼び、大切にしている。ただし実際払戻しを請求する利用者の割合はとても少ないとのこと。
6. 利用者との交流の場を提供
すべてのGroupon取引において、利用者とお店が会話できる個別のオンラインフォーラムが用意されている。そしてこれは期間限定ではなく、取引が終わってもクローズしない。したがって利用者はクーポン体験後にその内容を書き込む事ができる。Groupon競合サービスはこの機能をほとんど持っていないようだ。
7. 顧客と店舗、お互いの評価を大切に
Grouponの成功は、利用者の幸せと店舗の幸せ、両方から成り立つものだ。利用者は好きなお店に表彰を、嫌なお店に注意の評価を与えられる。一方、お店側もまたロイヤルカスタマーやチップを弾む人に表彰を、そうでない利用者に注意を与えることができる。
8. コールセンターは顧客との重要なタッチポイン
Grouponでは、コールセンターは利用者との接点として、とても大切な役割をになっている。対応する社員は特定のスクリプトを持たず、応対時間に制限もない。そして彼らは第一回目の電話で顧客の問題を解決することに対して強い責任感を持っている。まさにZapposと全く同じ考え方だ。
9. 独創的なスキルを持つ人材を雇用するために
Grouponのカスタマーサービス社員の70%は、なんと現地の演劇関係の人材だ。CS責任者のJoe Harrow曰く、演劇出身者はCS応対にぴったりだとのこと。彼らはエネルギッシュで、フレンドリーで、社交的で、迅速機敏で、人々を楽しませる。しかも彼らには昼間の仕事が必要だ。
なんとZapposに似た社風なのだろう。社員が仕事を楽しんでいる様はサウスウェスト航空にも通じる企業文化だ。これらの企業はソーシャルメディア上で圧倒的な人気を持つ、特筆すべき好感ブランドだ。
なぜ彼らはコスト度外視とも言える顧客重視の施策をとるのか。それは顧客接点でのコミュニケーションこそが、マスメディア広告より遥かに効率的なブランディング・チャンスととらえているからだ。
そして、このアドボカシー(顧客支援)の考え方、そこから生まれる感動や驚きの感情が、ソーシャルメディア上のクチコミ伝播効率を一気に高め、彼らのビジネスを強力にバックアップしているのだ。
GrouponやZapposは、本能的にソーシャルメディアに愛される術を知っている、ソーシャルメディア時代の申し子と言えるだろう。
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第二話: 米国ザッポス「顧客感動サービス」の経済合理性を徹底分析する
第三話: アマゾンが800億かけても買収したかったザッポスの奇跡
第四話: 驚きの反常識!ザッポス流マーケティングの真髄とは
著者プロフィール:斉藤 徹 (さいとう とおる)
株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役
2005年が創業。国内での企業向けSNS構築分野でトップシェアです。
(ミック経済研究所,アイティーアール社 2008年調査にて)
現在は,企業コミュニティを単体で捉えるのではなく,多様なソーシャルメディアと有機的に結びつけ「クチコミ動線」を設計・構築・運用するコンサルティング・ファームとしての色合いを強めています。
書籍・コラム・ブログは個人活動ですが,ビジョンとノウハウは,ループス社員一同で共有しています。創業テーマである Socialmedia Dynamics を見つめながら,ソーシャルメディアやクラウドソーシングの分野で高い専門性を磨き続けたいと日々励んでいます。(といっても全く堅い人間ではないです。 特に夜は柔らか過ぎと定評です)
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