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ミクシィは新戦略発表イベント「mixi meetup 2010」を都内のホテルで10日に開催し、mixi新プラットフォームを発表する。
新プラットフォームに関しミクシィ幹部は、今年6月に開催されたInfinity Ventures Summitでその概要を明らかにしている。(関連記事:ゲームを超えたソーシャルの価値を作る=ミクシィ新オープン戦略発表へ)
それによると、発表するのはメディア・デバイスプラットフォーム、ソーシャル支援プラットフォームなどと呼ばれる新戦略。海外展開の戦略についても言及があるもよう。
ミクシィ関係者は「これまでのオープン化はいわば序の口。これからmixiの本格的なオープン化が始まる」という。
日本も本格的なソーシャル化時代に突入するのだろうか。
2008年の末に発表されたmixiのオープン化って、mixiの中でサードパーティがゲームを運営していいですよ、という感じのオープン化だった。家の中に入ってきて自由にしてくれていいですよ、という感じのオープン化だ。
今度のオープン化は、家の中へ入ってきてもいいというだけではなく、家の中の道具を持ち出してもいいですよ、というオープン化だ。さらにオープン化を進めたわけだ。
どのような道具を持ち出せるというのか。例えば「mixiチェック」だ。9月6日に発表された新機能「mixiチェック」は、mixi内でニュース記事などの下にmixiチェックのマークが設けられ、関心、興味のある記事だったらそのマークをクリックすることで、自分のページの「mixiチェック」リストに簡単に追加できるという機能。クリック1つで、関心、興味のある記事をどんどんリストに追加し、あとで参照しやすいようにできるわけだ。これを「友人に公開」という設定にしておくと、友人関係にあるユーザーにも「mixiチェック」のリストが公開される。ここが重要だ。一人のユーザーが関心を持った情報を別のユーザーが同じく関心を持ち「mixiチェック」する。それをまた別の友人が見て「チェック」する。友人間のネットワークを通じてバケツリレーのように情報が伝播していく仕組みだ。
この「mixiチェック」という機能が、一部の外部サイトでも利用できるようになっている。TechWaveでも6日からすべての記事下につけている。mixiユーザーがこの「mixiチェック」をクリックすれば、mixi内のユーザーのページの「チェック」リストにTechWaveの記事の見出しが自動的に追加され、友人に公開されることになる。mixi内のニュース記事だけではなく、TechWaveのような外部のサイトの記事にも「mixiチェック」をつけて、友人間の情報のバケツリレーの仕組みの上に乗せることができるわけだ。「mixiチェック」という本来mixiの「家の中にあった道具」を外へ持ち出したわけだ。
この「mixiチェック」機能は、今のところ一部の外部サイトでしか利用できないが、明日のイベントでは広く一般に公開され、どのサイトででも利用できるようになるのだと思う。(注:「mixiチェック」に関してはTechWaveの事業担当である本田正浩が個人的にミクシィと秘密保持契約を結んだ上で、TechWaveに実装しました。僕は本田からは、その内容については一切聞いていません。また僕はmixi meetupでモデレーターを務めることになっているため、昨日開催された登壇者の事前説明会にも呼ばれましたが、参加しませんでした。この記事では、会社としてのミクシィや広報を通じて正式に得た情報を、契約や慣習に背いて公開しているわけではありません。あくまでも湯川個人がミクシィ関係者を取材して得た情報を基に書いています)
さてmixiチェックのようなmixiツールを外部サイトがどの程度使うようになるだろうか。
それは成果次第だと思う。例えばmixiチェックを記事下や商品の下に設置することでアクセス数や売り上げの伸びが確認されれば、サイト運営者は競って設置するようになるだろう。ミクシィは、半月ほど実際に運用した結果を公開すべきだと思う。
情報の流れ方が変わった
このバケツリレーのような情報伝播の形は、Twitterが普及したことでより鮮明になったと思う。例えばこれまでTechWaveでは、Yahoo!トピックス内にTechWaveの記事へのリンクが張られるとアクセス件数が跳ね上がった。なのでYahoo!に取り上げてもらうことが何より重要だった。これは一般企業が日本経済新聞に取り上げてもらいたいと思うのと同じことだろう。
ところが最近では、Yahoo!に紹介されなくてもTwitter上でのバケツリレーのような情報伝播で十分にアクセスを得るケースが増えてきている。例えばYahoo!JapanがGoogleの検索エンジン採用を本日発表?=米Wall Street Journal【湯川】 : TechWaveという記事は、当然のことながらYahoo!で取り上げてもらえなかったが、3万PV以上をTwitter経由のみで稼いでいる。
問題は、mixiにTwitter並みのバケツリレー的情報伝播力があるかどうかだ。ただどっこい、mixiは伸びていた【湯川】 : TechWaveという記事の中で紹介したように、20代におけるmixiの普及率はばかにできないものがある。若者向けのサイトでmixiチェック実装の効果が認められるようになれば、今後多くのサイトでmixiチェックが一気に普及する可能性があるだろう。
そうなれば、これまでmixiの中だけにあったバケツリレーのようなユーザー同士の情報伝播の仕組みが、日本のウェブ全般に広がることになる。mixiの中に情報を出さなくても、mixiのユーザーが情報をバケツリレーしてくれるようになるわけだ。言ってみれば、mixiが日本のウェブ全体の情報伝播のインフラになる可能性がある。
米国ではFacebookが既にそれを達成している。米国ではFacebookがバケツリレー的情報伝播のインフラになっているのだ。Facebookはそのインフラを世界に拡大しようとしている。そして日本での活動をいよいよ本格化させている。(関連記事:日本攻略の戦略、モバイルサイトオープン=いよいよ動き出すFacebook)。
今回のミクシィの戦略発表は、タイミング的にぎりぎりかもしれない。Facebookが日本国内でも勢力を伸ばしたあとに今回の戦略を発表しても、まったく効果がなかっただろう。今ならまだ戦いようがある。
ただたとえmixiが一時的に日本の情報伝播のインフラに成り得たとしても、今後グローバル化が進む中でFacebookが次第に有利になっていくことは間違いない。インフラとしてFacebookに対抗するのであれば、mixiも世界に出る必要がある。その辺に関しても明日発表があるのではないだろうか。ここ何ヶ月間か、ミクシィ幹部は海外出張を頻繁に繰り返している。アジアの有力SNSとの提携などの発表があるかもしれない。
とはいってもFacebookは既に5億人のユーザーを抱える世界的なSNSである。mixiに勝ち目はあるのだろうか。
「それはまだ分からないですよ」と情報社会学者の公文俊平氏は言う。世界の人口は68億人。Facebookはそのうちのわずか5億人を押さえただけにしか過ぎない。あと63億人も残っている。
特に途上国の人々は、格安スマートフォンを入手しネットユーザーになり始めた。モバイル機器を通じたネットユーザーの人口が今まさに爆発的に増加しようとしているのだ。mixiはここを押さえようとしているのだろう。
Facebookは実名主義である。情報を隠そうとするから、うそ、裏切り、誤解、確執が生まれる。情報はオープンに公開したほうがいい、というのがFacebookの創業者Mark Zuckerberg氏の考えだ。プライバシーに関する考え方も、よりオープンな方向に変わっていくべきだと主張する。強者の理論である。
mixiの幹部もこの考えに反対というわけではない。「あと50年もすれば世の中はZuckerbergさんのおっしゃるような世界になるかもしれない。でも今すぐそうなるか、というと難しいでしょう」と語る。
途上国にはZuckerberg氏のような強者の考えには、まだついていけないユーザーも多いだろう。そうしたユーザーに対してより現実的な情報共有の仕方を提案していく。これが今後のミクシィの基本的な方針になりそうだ。