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スマートフォンの急速な普及を受け、スマートフォンを通じたオンライン事業とオフライン事業の融合(オーツーオー、Online to Offline)領域に注目が集まっている。欧米のIT大手は軒並みこの領域に参入すべく水面下で活発に動いているようだが、中でもオークション大手の米eBayは関連事業を相次いで買収するなど目覚しい動きを続けている。eBayの投資家の一人は「ほぼこれで体制が整った」と語っており、本格O2O時代に向けて先陣を切った形だ。
eBayやeBay傘下のPayPalがこれまで買収してきた企業をざっと見てみよう。
PayPal
eBayが個人間決済のPayPalを買収したのは、2002年10月。PayPalは制度上のハードルもあり日本ではまだそれほど普及していないが、欧米では個人間の低額決済の手段としてデファクトスタンダードになっている。もちろん2002年にeBayが買収した際には、長期的な展望よりeBayのオークションの仕組みを補完する目的であったのだと思う。
PayPalは今年6月にiPhoneアプリにBumpのテクノロジーを搭載した。BumpはiPhone同士をbumpする(コツンとぶつけ合う)ことでデータを交換できる技術。実際には大きな振動をiPhoneの加速度センサーが認識し、位置情報を元に近くのユーザーを認識してデータを交換する仕組み。BumpはTwitterアカウントを交換し合うためのアプリとして人気だが、PayPalはこの技術をPayPalのiPhoneアプリに搭載し、個人間決済を可能にした。また8月にはAndroid版のPayPalアプリにもBumpのテクノロジーが搭載された。
fig card
店舗でPayPalを使った決済を可能にする仕組み。店舗側はPOSシステムにUSBで接続するデバイスを購入。このデバイスがわずか5ドルと安価なのが特徴だ。消費者は無料の専用アプリをスマートフォンにダウンロードしておけば、Bluetoothもしくはwi-fiでデータを転送することでPayPalの店頭での利用が可能になる。動画を見ていただければ分かるが、左半分が店舗側のPOSシステムの画面、右側が消費者のスマートフォンの画面だ。店舗のPOSシステムの画面に、消費者の顔写真が表示され本人確認できるようになっている。
PayPalが今年4月に買収。買収額は非公開。
RedLaser
あらゆるタイプのバーコードを読み取れることができるアプリ。詳しくは、O2Oの波③ バーコードスキャンが取り除くオンとオフの境界線【湯川】に述べた通り。eBayが昨年6月に買収を発表。(発表文:BREAKING: eBay Acquires RedLaser: The Leading Barcode-Scanning iPhone Application #ebaynews | eBay Ink)
Milo
リアルな店舗の在庫検索サービス。(関連記事:O2Oの波② Miloで地元店舗の在庫を確認【湯川】)
昨年12月に7500万ドルでeBayが買収したことが明らかになった。(関連記事:eBay Buying Milo.com For $75 Million)
WHERE
米国で人気の位置情報アプリ「WHERE」。ユーザー400万人。GPSなどで取得した現在地情報をベースに「eat(レストラン検索)」「drink(バー検索)」「play(娯楽検索)」など、目的に応じた周辺店舗、施設を検索できる。ハイパーローカルニュースな広告(地域密着型広告)を表示できる。今年4月にeBayが買収。買収額は非公開。
WHEREが核
このWHERE買収を発表した際にちょうどシリコンバレーで開催されていた位置情報系カンファレンスwhere2.0で、eBayの投資家であるDev Khare氏は「これで投資はほぼ完結。体制が整った」と語っている。同氏によると、すべてのアプリや技術をWHEREに組み込むか連動させていく考えという。家でパソコンで検索するときは、Miloのリアル店舗の在庫情報を取り込んだeBayのサイトでオンラインショッピングをし、街に出ればWHEREを使って周辺情報を検索し、そこから購入、決済へ誘導する。オンライン、オフラインに関わらずeBay関連のサービスを使ってショッピングを楽しめる環境を作っているわけだ。WHEREには広告も表示するわけで、広告、オークション手数料、決済手数料などあらゆる側面からの収入が期待できる体制だ。
位置情報系アプリのビジネスモデルが見えない、という意見をよく耳にするが、このように他のアプリやサービスとの連携の核になれるわけだ。
ここで一番重要なのがWHEREの存在。街に出たときの情報検索ツールとしてデファクトの地位を獲得できるのかどうか。Googleの「プレイス」もWHEREと同じようなデザイン。しかもGoogleプレイスはGoogleマップ、GoogleナビなどのGoogleサービスとの連携もスムーズだし、Android端末上では圧倒的な存在感を持つ。Googleは、店舗情報などにも力を入れ始めた。先行するのは事実だがeBayのリードは決してそれほど大きくない。