[動画] 「シリコンバレーの現実」、事業を無償譲渡し渡米したChatWork 山本敏行社長が語る 【増田 @maskin】

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[読了時間: 2分]

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 先日開催されたTechWaveのスタートアップ忘年会「clubVANGUARD」で、シリコンバレーに進出したChatWorkの山本敏行社長の講演を行った。

(写真は、2012年4月に大阪での講演時のもの)

 テーマは「シリコンバレーの現実」。

 2010年頃からシリコンバレーおよびサンフランシスコのシードアクセラレーターのモデルを踏襲したスタートアップバブルが日本で起っているが、ほとんどが真似するだけで現実味のないものだった。

 最も渡米が盛んだった2011年夏から2012年初頭にかけてはアポ無しで現地の投資家や企業に押し掛け、中には英語もほとんどできないなど無茶なグループも多く、日本人に対する悪評も少なくなかったのが現実だ。


 いわゆるスタートアップ企業は非常にもろいものだ。大きなリスクを抱え、未来に投資をする。だからこそ逆に、小説や映画のような無茶は禁物になる。もちろんいきなり渡米してビザが下りるわけもなく、大企業から出向したり、企業留学から転職といった比較的無難なパスとはワケが違う。

 ただ、筆者もそんなもろい関係をたどって米国および世界とのパスを模索し、北米ガレージベンチャーを経験したし、ChatWorkのようなとんでもない方法で渡米する人もいる。一般的に言えば「バカなやつ」かもしれないが、ChatWorkの生き様には共感せざるをえないのだ。

無茶と「リスクを取る」は全く違う




 そもそもChatWork (旧ECスタジオ)は、山本社長が北米に在住している時代にスタートしている。

 北米から、世界中の日本人をネットワーク化して事業を展開し、以降、どこ地域にいても自分がやりたい仕事で収益を得ながら事業を発展させるということを実践してきた企業だ。

 会社には電話がなく、ミーティングを希望されても断る ー あらゆる常識をくつがえしつつも、社員の満足度を向上させ、かつ売上もしっかり上げる。借金はゼロ。自由なスタイルで突き抜けるために、投資も受けない

 そんな彼らは、充分なキャッシュを生んできた事業をすべて譲渡して、ChatWork一本にかけるといい出したときは驚いた。新規事業で渡米する際の最難関とも言えるビザの取得も数ヶ月で果たし、社長自ら家族を連れシリコンバレー南部に移住したのだ。

 日本人の北米起業は、現地在学後や大企業等の出向後、投資家、自分や家族が国籍を持っている等のパターンがほとんど、純然たる日本人がいきなりビザを取得して移住というのは本当に少ない。(北米生まれなのに、ビザ取得に1年超かかったり、NGになる人はざらにいる)。

 そういった現状を加味しつつ、山本社長のシリコンバレーチャレンジまでの布石を聞いていただければと思う。

 以下は、このムービーに関連したFacebookポスト。彼らはシリコンバレーでの活動をFacebookで公開している。

前回の記事で書いたように日本人がシリコンバレーで成功するのは非常に難しいという内容を書きました。

http://www.facebook.com/photo.php?fbid=569127463103034&set=a.461782200504228.126435.461723403843441&type=1

なぜ日本人が厳しいかをさらに付け加えると

・日本の会社

日本に会社があってアメリカに子会社を設立するケースだと、日本の会社にに権利(IP)があるためアメリカのVCは投資してくれない。かといって日本の会社をアメリカの子会社にすると、もともとやってきた日本のチームはVCの的確かつ冷酷な指示に付いてこれない。

・英語

基本中の基本だが、日本は世界中で見ても最も英語が苦手な国民。日本語という特性上仕方のない部分もあるし国内にマーケットがあったから必要性がなかった。
でもこれからグローバル化するに当たってこれが大きな障害になっている。日常生活の英語レベルでビジネスができるわけもなく、ネイティブレベルを求められるのは当然で日本人にとって非常に厳しい。

・価値観

狩猟民族と農耕民族、海に囲まれた安全な国土で、協調性を大切にしてきた日本人。日本製品の輸出によって支えられてきた時代は良かったけれど、今や出て行かないといけない。
外国から日本に入るのが難しいガラパゴスマーケットではあるが裏を返せば、日本人からみたら外国全てが逆ガラパゴス。
日本の中から外国のニーズを満たし売上を上げるのはほぼ不可能。
その地に入り、その地に自分自身を馴染ませ浸透させないといけない。

・マーケット

日本で通用するマーケティングや顧客基盤は海外では一切通用しない。当然ながら同じ考え方・手法でやっても全くもって響かない。その地のその価値観に合わせたものでその地のローカル企業以上のものを提供しないといけない。
日本人の安全・信頼・ホスピタリティのような強みはベータ状態で素早くリリースされ、機能・価格が重視される海外でIT上において日本人の強みは重要とされていない。

・資金

日本に親会社がある場合は海外VCからの資金調達は難しい。
日本のVCは日本のマーケットしか基本は知らないから、お金は入ってもマーケティングの助けにはならないので、逆に意見者が増えて足かせになる可能性が高い。
では自己資金で攻める必要があるが日本でしっかりマネジメントできる人を育て、日本のビジネスを回し利益を出しながら決定権者を海外に送り込む必要がある。
社長・事業長クラスを派遣せずに切り込めるほど海外市場は甘くない。海外に重要ポストの人間を送り込んで日本本国のビジネスが傾くケースも多々ある。

・マネジメント

協調性を重んじる日本人。全体的にホスピタリティ高く、責任感持って仕事をしてくれる傾向が高い国民性。
海外はそうじゃない。突然今日クビにすることもあればどれだけ重要なポストについている人でも突然辞めると言い出すことが多々あり(条件のいい会社へ)辞めたいと言われたら会社は2週間で退社を認めないといけない法律まであるのだそう。もちろん引き継ぎはできない。
だから普段からいつ辞められてもいいようにドキュメント化をしっかりさせておく必要がある。いつでも辞めさせることができるようにアメリカ企業の給料は月2回払いがデフォルト。月1回だったら
来月の給料まで負担しないといけないので資金がギリギリのスタートアップは資金が持たないからだそう。
スタートアップは2週間ではなく毎週金曜日が給料日という会社も良くあるのだとか。海外での経営は
一見車の運転のように同じ車、同じ交通ルールに見えるが右側ハンドル、左側ハンドルの違いがあり同じように運転したら大事故になるように、真逆のスタイルでマネジメントする必要がある。

・ビザ

日本の大企業の社員でもビザが通らないことが多々あるそうだが、スタートアップになれば通るほうが稀かもしれない。
ビザが通らないということは土俵にも上がらせてもらえない。
幸いChatWork社は2000年創業で黒字経営を続けてきた経緯や資本金の額、プロダクトのビジネスプランが認められL1という種類のビザが1年だけ降りたがシリコンバレーに10年以上いる方には「ビザが降りただけ良かったじゃない。ビザが降りたらゴールみたいなものだよ」と言われるほど厳しいのだそう。
我々からすると「いえいえ、あくまで土俵に立っただけで全くこれからどうしていいものか」という状態ではあるがやる気はあっても土俵にすら立たせてもらえない。
ビザが通る大きなポイントは一つ。アメリカ国内でアメリカ人の雇用を生むかどうか。海外から優秀な人をたくさん連れて来られたらタダでさえ10%の失業率がさらに上がってしまう。
とにかくこの会社はアメリカ人を採用する見込みがあるかのみ。
ビザが通らない会社の状態で海外市場で成功するのは到底無理。
ビザが通らなかったことで逆に資金、人材の流出を防げて良かったと考えても良いかもしれない。

・スピード

日本の会社は縦型組織。しかも大企業の場合は特に決定権は日本本社にある。シリコンバレーではスピードが命。
初めてあった商談で、今決めてくれということもある。
日本の会社は社に持ち帰って、稟議・稟議・稟議。。。
1ヶ月後にやりましょうという返答では、もう相手はいない。
決定権者が会議に参加するか、もしくは翌日には回答できる体制でいなければスピードについていけない。

ChatWork社も代表の私自らがシリコンバレーにいるためまさに今このシリコンバレーのスピード感を体感している。

2日前に初めてあった会社との打ち合わせにCOOの井伊が行き、井伊からその日中にChatWorkで詳細情報が届く。夜中にそれをチェックし、翌日すぐにそのミーティング。そしてその条件に興味があると回答。明日うちのオフィスに来れないかと提案。「11時〜15時なら行ける」との回答。
サンフランシスコからシリコンバレーに来訪してもらうため11時〜15時の前後に往復3時間ほど移動時間があるため、おそらく他の予定も入っていたと思われるが、それを全てキャンセルしてでも打ち合わせに来る。
これができるかどうかで大きく変わる。

日本人の責任感、律儀さは素晴らしいがこういう大チャンスの時に逆に足かせになる。本当の大チャンスが来ているなら家族が病気だとか何かしらの理由をつけてでもそれを掴みにいくしたたかさが海外で切り込んでいくには必要なのかもしれない。

ChatWork社もそのスピード感についていくべく打ち合わせを先に決めてから、それが技術的に可能かを
CTOに確認するべく連絡。ChatWork社は先週末から冬休みに入っているため、CTOはモルディブ滞在中。
会社の命運がかかっている商談になる可能性が高いためこれらの経緯を説明した動画をChatWork経由で送付し、12時間以内に返事して欲しいとメッセージ。
2時間後に「GoしてOKです」の回答。

さて、これからその重要な商談が始まる。。。

via Facebook 「ChatWorkシリコンバレー挑戦日記 」

【関連URL】
・「世界のニッポン人」、海外で活躍する日本人のためのご近所つながり支援ポータル by ChatWork 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51771923.html
・ あの “非常識な会社”がまたやった。売り上げのある事業をすべて手離してシリコンバレーで挑戦開始 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51761419.html
・TechCrunch Disrupt参加者からのレポート、日本の存在感は? 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51762185.html
・「メールの時代は終了しました」 非常識な企業による非常識なコミュニケーションサービス「チャットワーク」が登場【増田(@maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51608103.html
・「お客に会わない」で有名 日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方 【増田(@maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51523657.html

蛇足:僕はこう思ったッス
シリコンバレーへのチャレンジで、現在最も大切なことは「単独でどこまでできるか」といことだと思う。大企業経由でもなく留学後のオプションでもなく、自分で考えてチャレンジする。突撃訪問とか「英語できなくてもいいからいっちゃえ!」は、チャレンジではなくただの無謀でむしろマイナスだと思う。失敗してもその過程は必ず経験値になる。それと、山本氏も触れているが「スピード感」は最低限持ってチャレンジしていってもらいたい。シリコンバレーでは、街中でITのことがトピックになっている。カフェでおもしろいガジェットを持っていれば会話が拡がるし、何かビジネス上の関係が構築できそうであれば、数分単位で決定が下される。その点で、今の日本人全体は完全に負けていると思う。業界トップの有名人ですら、談話などを聞く限り「え、ずい分古い話だな」と思うことが多い。日本がリードしているのに、それの気がつかない人が大半というのは、非常に残念な話だ。
飲んで遊んでいる場合じゃない。あの地域が魅力的なのはハードワークですごく楽しんでいるからだ。ITという素晴らしい業界にいる以上、日本村でぬくぬくやっているのはもったいないことだと思う。

著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
 夢を叶える技術者。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてのIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。活動タグは創出・スタートアップマーケティング・音楽・子ども・グローカル・共感 (現在、書籍「共感資本主義」執筆中)。地方から全国、世界へを体現中。

メール maskin(at)metamix.com | 書籍情報・ 詳しいプロフィールはこちら


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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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