dgscope 本格始動、新体制の「ミクシィ」とスタートアップ「イノベータ」がタッグを組む理由 【@maskin】

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[読了時間: 3分]

 ミクシィの社内ベンチャー制度イノベーションセンターから立ち上がったスマホ開発支援サービス「DeployGate」とスマホのユーザビリティテスト事業「UIScope」を展開するInnoBeta(イノベータ)の本格的な連携が2013年7月3日に始まった。

 その名も「dgscope (DeployGate Scope)」。開発中のアプリをスマートに配布し動作ログを取得できるサービス「DeployGate」の画面から、直接ユーザーに対しテストを実施することができるようになる。価格は1テストあたり3,000円/ユーザー(最低5人から)

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(写真(by maskin):左からInnobeta 取締役 有山貴清 氏、ミクシィ DeployGateチーム 井上恭輔 氏、Innobeta 代表取締役 平石大祐 氏、ミクシィ DeployGateチーム 藤崎友樹 氏

 ミクシィの「DeployGate」とイノベータの「UIScope」が提携したのは2013年4月10日。お互いが「これほどいいパートナーシップはない」と提携を即断。契約締結まで3週間というスピード展開だったという。

 ミクシィ「イノベーションセンター」はむやみにスタートアップを量産させるわけではなく、目標設定に対するドライな判断を繰り返しながら前進をし続けている。イノベーションセンターのスタートは2012年8月から。成長を遂げる「DeployGate」「ノハナ」を生みつつも、すでに1プロジェクトが閉鎖されているのはご存知の通り。

 また、ミクシィに限らず、買収で事業を組み込むパターンが主流を締める中、本ケースはあくまでコラボ。すでに93か国、500超開発者の5000超アプリでの導入実績があるミクシィ「DeployGate」側が販売代理点となり、イノベータのサービスを一メニューとして統合する形で提供している。

 その約一か月後に発表された体制変更では、新CEOの朝倉氏が自ら新生ミクシィの要の一つとして「スタートアップの流れを加速させる」と名言するなど、大手企業におけるスモールチームおよびアントレプレナーシップの重要性を改めて印象付けられた形となった。

 まだ、スタートしたばかりのこの座組みではあるが、大手の強み、スモールチームの利点、そしてコラボすることの重要性を浮き彫りにしてくれる期待がある。実際彼らはどんな考えでタッグを組んだのか、話を聞いた。


開発スタイルを大きく変えるという挑戦

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写真(by maskin):ミクシィ DeployGateチーム 井上恭輔 氏

ミクシィ 井上恭輔 氏:
 「かつては、ローカルPCで作成したアプリを、USBメモリなどにコピーして、複数部署にまで届けにいっていたことがあるんですが (参照:ミクシィが世界に通用するAndroid開発支援サービス「DeployGate」をリリース)、DeployGateによって作ってすぐに配布できるようになりました。

 開発スタイルの変容として見てみると、CI( continuous integration)として品質改善や納期短縮の次のステップとして、CD (continuous deploy) としてその開発スタイルそのものをを変えることができたんじゃないかと思います。中には半年で450回も新バージョンを配布してテストすることもあり、それはDeployGate登場前では考えられませんでした。

 ここにイノベータさんの「UIScope」が組み込まれることで、さらに開発スタイルが変わってきます。

 そもそも、従来のユーザーテストといえば、市場に投入する前に実施するものでした。がっつり作り込んだ製品の反応を見たり、市場調査目的で実施されていたわけですが、「UIScope」を使用すれば、開発段階でテストを依頼することもできます。例えば「女子高生5人に○○のテスト」という形でオーダーをすると3日後にはその結果が見え、即時プロダクトに反映することができるわけです」。



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ミクシィ DeployGateチーム 藤崎友樹 氏

ミクシィ 藤崎友樹 氏:
 「そもそも、社内の開発業務における知見をプロダクト化していくという発想で生まれたDeployGateですが、イノベートさんとのタッグは新体制となったミクシィ全体でスマホアプリケーションに特化してどんどんアプリをリリースしていこうという流れにフィットしているし、先行配信などのプラットフォームとして活用したり、私たちの取引先からも求められていたり、非常にタイムリーでした。

 社内のみならず、世界に向けこの取り組みを普及させていく考えで、その足がかりとして2013年5月に米サンフランシスコで開催されたイベント「Google I/O」に出展しましたがそこでも反応も上々です。

 海外に向けた露出は、アドワーズ広告くらいで、大手メディアでの掲載はTechCrunchしかありません。知名度が無い中ではありますが、製品のことを説明すると、きちんと評価してくれるということがわかりました。Android開発者は、世界中で同じ課題感を持っているんです」。

 日本とアメリカではiPhoneが主流ですが、例えばロシア、東欧、ブラジルなどはAndroidが主流で開発者も多いようなのです。

 一時使用上のトラブルがあった時「早く直してくれ!」と問題を解決するまで何度も強い調子で連絡を入れてくるブルガリアのユーザーさんがいたのですが、解決後、感謝の言葉を送ってもらいました。結構、日常的に使用して下さっていることを実感します」。



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Innobeta 代表取締役 平石大祐 氏

Innobeta 平石大祐 氏:
 「UIScope/dgscopeも国内外からの問い合わせが増加傾向にあるという状況です。海外ではやはりアジア、欧米も多い状態です。将来的には、クロスボーダーでテストができるようにしたいのですが、日本から「海外進出前のテストがしたい」という相談が多くなってきています。

 UIScope/dgscopeは、テスターとなる一般ユーザーとテスト依頼企業を同時に集めなければならない必要がありますので、海外展開については各国のパートナーさんとの関係構築をしている段階ではありますが、このコラボで加速していきた考えです。

 日本は約4500人のテスターがいますが、海外展開でもまずはそういった土台を構築する必要があります」。



ミクシィ 井上恭輔 氏:
 「DeployGateは英語版を展開していますが、こうした世界各国のユーザーさんは、英語は第二外国語なんですね。そういう意味では日本人と同じ状況なので、人によっては不得手かもしれませんが、そういうった障壁を抜きにして愛用して下さっている。つまり、開発支援サービスは、良いものさえ提供できれば世界に出ていけるものだということを実感するんです。

 平石さんの言う通りdgscopeはテスターが揃う前提で提供できるサービスですが、世界で求められているという状況も方向性も同じですから、一緒にがっつり組むことで、互いに品質を高め、サービスの土台を構築できると思うんです」。


開発スタイルを大きく変えるという挑戦

 ミクシィ DeployGateとイノベータの邂逅には、ある種の必然性があった。

 それは、アプリ開発者支援というホットな領域が、日本国内でスッポリと抜けている点と、音楽や絵画といったアート以上に言語を越えた世界共通の課題感を持っているという点だ。

ミクシィ 井上恭輔 氏:
 「おっしゃる通りですね。日本の市場においては、開発者支援にフォーカスしているサービスやプロダクトがまったく無いんです。シリコンバレーでは、どのシードアクセラレーターを見てもそういったジャンルにトライするチームは必ずいくつか出てくる状態。

 そんな中で、唯一イノベータさんについては、その領域での足がかりを得つつ売上も立てて世界をターゲットに成長している。

 開発というのはボーダーレスなんですよね。世界の悩みなんです。やりやすいんですね。

 よく日本の開発者は “まず日本を全部とって、それから海外だろう”という人がいますが、僕等にとっては日本の市場も海外の市場も同じなんですよね。世界で多くの人が求めているものがあるのなら、やればいい。シリコンバレーだって、北米だけをターゲットにしたプロダクトってそんなに無いと思うんですよ」。


Innobeta 平石大祐 氏:
 「UIScopeを開発したきっかけは、私達自らの課題感からでした。リーン型の開発手法を採用しようとしていた時、テストをしたいと思ったのだけど、いざ見積りを取ると500万円ととてもアプリ等の開発予算に見あわない金額だったんです。それなら自分達で解決できるんじゃないかという発想でスタートしたのですが、冷静に考えればそれはアプリ開発者共通の課題だったと言えるかもしれません」。


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Innobeta 取締役 有山貴清 氏

Innobeta 有山貴清 氏:
 「海外のテスト市場はどうかというと、もちろん以前から存在していましたが、PC向けのものが大半だったんです。しかも、コンサルティングの会社が囲い込みの一環として提供しているに過ぎず、そのテスティングノウハウなどがオープンになっているわけではなかったんです。

 そういったノウハウをオープンにして、安価なサービスにすることで世界共通の市場を形成できると考えたんです。

 実際リリースした後の良い傾向としては、今までユーザーテストをしたことないような企業も利用し始めているので、取引量として10倍は狙えると思いますし、日常的にテストをするというような流れになってほしいと思います」。



ミクシィ藤崎友樹 氏:
 「DeployGateでは、社内で使用してきたツールをサービスにしていったもので、社内外の利用動向を見ながらサービスを研鑽することで、開発スタイルの変化を実感しているような状態です。

 開発者の悪い癖でもあると思うのですが、一回作成して検証したら終了ではなくて、何回もそのサイクルを展開したほうが品質向上に寄与できると思うので、日常的にそのような開発スタイルを採用するような啓蒙も続けていきたいですね」。



ミクシィ 井上恭輔 氏:
 「日常的にdgscopeのような開発スタイルを取り入れてもらえるようにすることは重要だと思います。そういう意味では、サイト内のコミュニティ欄には世界中のユーザーからの投稿があり、コミュニティの有志が開発環境Unity用のDeployGateプラグインを開発してゲーム業界でも使用されるなどの実質的な動きも出てきていることに注目しています。

 数量だけを追求するよりは、開発サイクル/スタイルの一文化を築きたいと考えています」。


 今後も同じようなコラボが増えるのか?という問いにミクシィ 井上氏は「開発支援ツールはその時々で必要なものが出てくるので、うまくフェアに提供して互いにメリットがあるような形で提供できていったらいい。ユーザーのメリットを追求しつつ、それを実現できるポジションにいる」と語る。

 大手SNSミクシィ内スタートアップである「DeployGate」。単発起業同等の多数のチャレンジをすることで 多数のノウハウが社内に蓄積されるほか、新体制の発表とあいまって新しい風が吹きつつあるようだ。
 
 この潮流にスタートアップとしてコラボするイノベータ 有山氏は「世界を採るならDeployGateしかないと思っています。ここでは終わらせない」と取り組みに高く期待する一方で、ミクシィ 井上氏は「開発しながらちゃんと営業にコミットして利益を出す、本当の意味でフルコミットするスタートアップは見たことがない」と絶賛するなど深い信頼関係が本コラボの原動力になっているように思う。


【関連URL】
・Android(TM)アプリ提供者向けサービス「DeployGate」、 「Android Application Award 2013」にて優秀賞を受賞
http://mixi.co.jp/press/2013/0628/11784/
・mixi (ミクシィ)新体制スタート、朝倉社長らがブログで挨拶 【@maskin】
http://techwave.jp/archives/mixi_branew.html
・新ミクシィ「ネイティブアプリに集中」、アントレプレナーの巣として変革へ 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/mixi_2013_new_plan.html
・「DeployGate Scope」でアプリ開発を強力支援 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51786188.html
・「ミクシィとInnoBetaが業務提携、新サービス「DeployGate Scope」でアプリ開発を強力支援 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51786188.html
・ミクシィが世界に通用するAndroid開発支援サービス「DeployGate」をリリース 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51761137.html
・1モニター3000円からできるスマホテスト「UIscope」登場、フィードバックは動画とアンケートで最短3時間で処理可能 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51766020.html


蛇足:僕はこう思ったッス
ミクシィの歴史始あって以来のドル収益を叩き出している「DeployGate」。GoogleI/O関連の取り組みで、ある人にプレゼンしたところ「おまえたちの話はよくわからなかったけど、サービスはおもしろいからトップページや動画をすぐ修正しろよ」と言われたとかww。シリコンバレーのリアルな現実。
両者は「ボーダーは無いんだ」と繰り返しいう。本当にそうだと思う。


著者プロフィール:TechWave 編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
変化し続ける高エネルギー生命体。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてのIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなどほとんど全てのIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ブログCMSやSNSの啓蒙。ネットエイジ等のベンチャーや大企業内のスタートアップなど多数のプロジェクトに関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。活動タグは創出・スタートアップマーケティング・音楽・子ども・グローカル・共感 (現在、書籍「共感資本主義」「リーンスタートアップ」執筆中)。@宇都宮ー地方から全国、世界へを体現中。
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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭から国内外のソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、ネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。直近では通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のIT系メディアであるスペインの「Softonic」に参加後、2016年からTechWave第三章として新興メディアの開発を再スタート。国内最大規模のスタートアップ&B2Bイベント「アプリ博」のオーガナイザー。
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