ベンチャーの最先端、学ぶ側から興す側に立つには?【@Naruki】

Event, News, SiliconValleyシリコンバレー, スタートアップ, 東成樹

[読了時間:8分]

新規事業を実現させたいなら、シリコンバレーに行くのは一つの選択肢だ。Women’s Startup Lab代表の堀江氏に、日本とシリコンバレーの新規事業の進め方の違いを聞いた。最後に、彼女がシリコンバレーで主催する起業家支援プログラムを紹介する。(2015年6月7日)

新規事業を、収益が上げられるまで育てるには?

「イノベーション」や「ベンチャー」という言葉は記事でよく読むし、議論もできる。そんな方はTechwaveの読者であれば多いだろう。では実際に新規事業を立て、市場の空気をつかみ、収益が上げられるまで育てあげよ、と言われたら何をするだろうか。

本記事は起業家だけでなく、企業内ベンチャーに所属する人や、新規事業部門、イノベーションの推進部門などの構成員に向けて書いている。

新規事業が安定して収益を上げられるようになるには長い道のりがある。どのようにアイデアを見つけ、そのアイデアに投資を受ける価値があるか見ぬき、チームを築き、投資家から投資をとりつけ、事業を拡大してゆけばよいか。日本とシリコンバレーのビジネスの立ち上げ方は、どのように異なるのか。

シリコンバレーと日本を行き来しベンチャー企業の成長を支援するWomen’s Startup Labの代表、堀江愛利氏に取材した。両国の文化を知っているからこそ見える、日本の強み・シリコンバレーの強みを聞いた。

取材の最後に、彼女がシリコンバレーで主催するアクセラレータープログラムを紹介する。

Women’s Startup Lab

ハイテクメッカのシリコンバレーで、女性起業家の育成をしているアクセラレーター。起業家育成プログラムを通じ、これまでに40人もの女性起業家を卒業させ総計400万ドルの投資を受けてきた。例えば、昨年には人工知能システムのCogneaがIBMにより買収された。

人工知能コンピュータWatsonにさまざまな人格を–IBM、バーチャルアシスタントのCogneaを買収
(ZDNet Japan)

Women’s Startup Lab代表の堀江氏は、創立二年に関わらず、これまでCNNの10 Visionary Womenに選ばれたりHuffinton Postで取り上げられたりした。

wsl
(左から二番目が堀江氏。HPのABOUT USより)

ゾウとねずみ

日本とシリコンバレーを比べると、日本の技術は高いと堀江氏はいう。なぜなら、日本人には顧客に寄り添った深い洞察力があり、顧客の心をつかむ遊び心ある製品が作れるからだ。素晴らしい技術がある一方で、新しいことに挑戦する時の動きにくさもある。早く動いて失敗し、何も考えていない人間のようにとらえられるのを恐れて、行動がとりづらい人もいるのではないか。よって、アイデアがあっても新規事業として採択されず、ものにならないことがあると堀江氏は指摘する。

一方で、シリコンバレーのよい所は、「面白いからやっていこう」という「ポジティブ」さである。ともかく動き、そこから得た経験により現在の市場を常に学ぶ姿勢がある。

企業とベンチャーの成功方式は「違って当たり前だ」と堀江氏は言う。この違いは「ゾウ」と「ねずみ」で説明できるという。「ゾウ」と「ねずみ」の違いは、進め方(Process)・結果の測り方(Measurement)の2点に表れる。

1進め方
企業(ゾウ):慎重に会議を重ねる
シリコンバレー(ねずみ):動きが早く、ともかく試す

シリコンバレーのベンチャーの場合、ともかく試す。そうすれば、たくさんの失敗、発見ができるからだ。よってイノベーション、インスピレーションが得られ、新しい市場を発見できる。

シリコンバレーでは失敗が重視される。失敗によって、その失敗を解決するために何をすればいいか考えられるからだ。

2結果の測り方
企業(ゾウ):確実に測れるデータをもとにする
シリコンバレー(ねずみ):いかに多くを学べたかを重視する

例えば、A/Bテストを行う。顧客対応のオペレーターを置いたサービスと、人工知能を使ったサービスとを試してもらい、オペレーターを置いた方がユーザー数は増えたが、人工知能を使ったものはコスト削減になった、というフィードバックを得る。なので初めはオペレーターを置いてユーザー数を増やすことに専念しよう、などと決定する。過去のデータを探すよりは、実際に顧客の反応を得ることで、今ある製品のどこをどのように改善するかを学ぶことができる。

堀江氏の話をまとめると、シリコンバレーではアイデアを見せるハードルが低いと言えるだろう。つまり、思いついたら人に見せやすい。そして、見せると「こうしたらいいんじゃない?」「実現のお手伝いができるよ」などとフィードバックが返ってくる。

記者は初めてシリコンバレーに行くまでに、英語で取材したことがなかった。現地では起業家の立食パーティーに参加し、取材を受けてくれる人を探した。だが初対面なので、まずどうしたら話しかけられるか、というところから考えていた。会場の真ん中では40人ほどの参加者の前で「今週のベスト起業家のプロダクトはこれ!」という紹介とともに、ロボットが歩いている。司会はパーティーの最後に「誰か、この参加者たちに伝えたいことがある人はいますか?」と投げかけた。私は手を挙げて「日本から来ました。Techwaveという媒体で、日本の起業家たちにあなたのプロダクトを紹介できます」と発言した。パーティー後「日本でローンチしたい商品があるから記事を書いてくれないか」とドイツ人のアプリ開発者が話しかけてきた。自立したiPhoneが360°回転してパノラマ写真を撮ってくれるアプリTwister【@Naruki】がその初記事である。

つくりたいものがある時に、データやプロトタイプがなくても「こんなアイデアがあるんだ」と発することができる。すると「ねずみ」の例のように、フィードバックが得られ「私のサイトでファンドレイジングしてみない?」と言われたり「ニュースアプリを作りたいなら専門家が友人にいるよ」と紹介されたりする。こうして、つくりたい人と実現できる人が出会って、アイデア段階だった事業に次の扉が開く。

小さな思いつきがふくらんで形になってゆくスピードは、シリコンバレー特有だ。それは、シリコンバレーが「したい人」「できる人」であふれているからだと記者は考える。アイデアを持っている「したい人」と技術的にそれが「できる人」とが交流する内に、新しい事業が形になってゆく。

もしもあなたが新規事業を、シリコンバレーのスピードで形にさせたいなら、現地にいる「できる人」「したい人」たちと接触するのが一番である。堀江氏は2週間のアクセレレータープログラムを用意している。

シリコンバレーへ来ませんか?

プロダクトを見せて、市場の息をつかむとは何か。ねずみのようなスピードで動き、失敗し、インスピレーションを得る、とはどういうことか?

堀江氏はStartup Acceleratorという2週間のプログラムを用意している。そこでは実際にあなたの新規事業のピッチをしてもらう。事業計画を作成し、投資家の前でプレゼンテーションする。Women’s Startup Labに集まる一流の起業家・ベンチャーキャピタリストとのネットワークが好きなだけ活用できる。

なにより「したい人」「できる人」だらけの環境に身を置ける。シリコンバレーの人々に会うことで、事業を形にするだけでなく、将来のビジネスパートナーを見つけることができるかもしれない。シリコンバレーへ来てみませんか?

もう一枚の招待状

Women’s Startup Labの日本メンバーの眞野里季(まのりき)氏より、アクセラレータープログラムの新しい開催情報が入った。シリコンバレーにて、新規事業を成功に導くためのスキルを習得するプログラムだ。以下に詳細を引用して記事を終える。

WSLabでは、7月に日本企業向けの特別なアクセラレータープログラムを開催します。数日内にウエブサイトも立ち上がり、募集が始まります。
今月半ばからは、JETRO様の後援を受けて、国内企業の皆様にも宣伝して参ります。

このプログラムは「JAPAN X」というブランド名で展開していく予定です。
以下、現在公開可能なプログラムの内容です。
あと数日しますと、予定している講師の方のお名前なども、公開していけるかと思います。

スタートアップ、ベンチャー集中アクセレレーション プログラム

✔対象:日本のスタートアップ経営者や企業の新規事業担当者

✔目的:・シリコンバレーを生で体験、面談、プレゼンやピッチの実施トレーニングによ    りアントレプレナーの精神、根性、センス、発想を身につける。
・また、現地でのパワーネットワークやメンターを自身で見つけることができる。     ・グローバルを視野にいれ、市場開拓に必要な、英語でのプレゼンやディスカッ    ション、著名アドバイザーやメンターからのFeedbackを得つつ、
新規事業を成功に導くための様々なスキルを習得できるプログラムです。

✔日時:7月26日~8月8日の2週間(8月8日はサンフランシスコで開催されるJ-POP Summitでのピッチイベント)

✔場所:シリコンバレー

✔プログラム内容:イノベーション創出のためのレクチャー
リーダースキル
パフォーマンスコーチ
メンター
シリコンバレーツアー
グローバルリーダーとしてのネットワーク作り

【取材協力】
堀江愛利: Women’s Startup Lab代表
眞野里季: Women’s Startup Lab 日本メンバー、Impact Japan Director
Women’s Startup Lab: http://www.womenstartuplab.com/


蛇足:僕はこう思ったんですよ

Naruki

堀江氏とのインタビュー後、シリコンバレーは「行かなくっちゃわからない」という話が出ました。新しいアイデアを形にするまでの速さや、アイデアを人に見せるステージの多さは、現地で初めて分かるということです。

例えば、私が「記事が書けます。あなたの所でインターンさせて下さい」と言えば、「分かった、来週オフィスに来て。人を紹介するから記事を書いてよ」と話が進みます。シェアハウスにいるブラジル人が「こんなプロダクトを作っているんだ」と言えば、隣の席のスウェーデン人が「僕のサイトでファンドレイジングしない?」と提案します。したいことがある人同士が出会い、アイデアが前に進みます。そのスピードは速い。なぜならば、毎日どこかでピザを片手に持つ交流会が開かれているから。ある交流会では、プレゼン発表後の立食パーティーでゲストブースがもうけられ、男性がキーボード演奏を始めました。新しい演奏機器のデモンストレーションでした。別の日にはセミナーの開演を待っていると、参加者80人が一人ずつあてられ、自分の作っているサービスについて発言することもありました。

日本でも交流会があります。違うのは、量です。シリコンバレーは「これが作りたいんだ」という人であふれています。彼らは、「今、これがしたいんだ」と自ら手をあげ、パーティーやシェアハウスで伝えます。作りたい意志に満ちている環境。シリコンバレーはつくり手であふれている。

新しい事業を考えているあなたに質問です。あなたは、つくりたいですか?

「つくりたい」気持ちがあれば、シリコンバレーには協力者がいます。プロトタイプの使い心地をインタビューしていたら、「作りたい」と思っている技術者に紹介されるかもしれません。プレゼンを見せ続け、投資家のフィードバックを受けるうちに、一緒に事業をしないかと誘われるかもしれません。

「つくりたい」意志さえあれば、実現の一歩が踏み出せます。飛行機で10時間。シリコンバレーはつくり手の国です。

HigashiNaruki

「記事を書きます」という名目で、テクノロジー、広告、起業やごはんに関する様々な方と会い、おいしく記事を書いています。

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