水口哲也氏が見るVR表現の地平、「Rez Infinite」は映像と音楽 そして全感覚をメタ融合する 【@maskin】

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 ロシア生まれの抽象画家ワシリー・カンディンスキー(1866-1944)。彼は、その先鋭的な芸術表現を「アーティストの奥にある感覚の表現」と説明した。その言葉の通り、風景画を主体とする具象的な作風は、晩年に向け多様な感覚の複雑な関係性を表現する極めて抽象的ととらえられる表現への世界へと没入していった。

 一見、具象的に思える作品は、よくみれば写実的とは異なり、色や形までも異質なもので埋め尽くされることもある。しかし、それは被写体そのものであり、視覚的にはイコールではないにしても、まさに人間の五感のそれぞれを一枚の絵の上に画材で表現していったかのように思えてくるのだ。

 どうやら彼の芸術的感覚特性を「共感覚」=シナスタジア(synesthesia)と呼ぶらしい。記号や色が音を呼び、音が映像を呼ぶ。

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 ゲームクリエイター 水口哲也 氏が話題のPlayStaion VRのローンチタイトルとして開発を続けるシューティングゲーム型ミュージックビデオ「Rez Infinite」は、まさに共感覚を追及するための作品だ。さらに、ライゾマティクス・アーキテクチャと慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の協力によって生まれた拡張版スーツ「Rez Infinite – Synesthesion Suit」を装着してプレイすることで、音楽とVR映像、そしてバイブレーションの融和した世界は、私たちの五感以上を震わせる爽快感と没入間を体験することができる。


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 「Rez」は2001年にセガからデビュー。日本ではDreamCastとPlayStaion2でリリースされ、翌年EUとアメリカでもリリースされた。2008年はXboxのダウンロードタイトル(Xbox Live Arcade)として復刻。「今だに旧作品を入手してプレイしてくれる人がいる」と水口氏は話す。

 当時、ケンイシイ氏を筆頭とする世界的ミュージシャンが楽曲を提供したことで大いに話題となったが、長年多くのファンを魅了する理由は、その斬新なゲーム体験にある。シューティングゲームの体を成しているが、その体験は音楽の再発見を促す世界への入口へと直結している。やればやるほど音楽的興奮の世界へと没入していってしまうのだ。初期版の発売同時期、より強い振動を発する周辺機器としてバイブレーターが発売されたりしていた。「Rez Infinite」の「共感覚スーツ(Synesthesion Suit)」は、まさにこのバイブレーターが全身に広がり高度化したものといってもいいだろう。

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プレイヤーは「共感覚スーツ(Synesthesion Suit)」を身に着け、PlayStation VRのグラスとヘッドフォンを装着してプレイする。銀色のスーツは、水口氏がデモの時に装着していた特別使用。共感覚スーツのバイブレーターが動作している個所が点灯する仕組みになっている。

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 PlayStation VRのグラスは大きめだがフィット感が高く軽量だ。いわゆる3D酔いのようなものが発生するような感覚はない。上下左右に振り向けが実にスムーズに映像がついてくる。

 「Rez」のコンテンツ自体は抽象化&記号化されたモチーフが使用されているため高度化したように見えにくいが、実際はフルHD(1080)でフレームレートは毎秒60、3D音響が使用されている。PlayStation VRのグラスはそれらを表現する十分な能力を持っているように思えるが、水口氏は「まだまだ、この先がある。3D音響だってもっと高精細なものが使用できるし、8Kのディスプレイを両目で見れば、現実で見ているものと同じ世界になる」と貪欲だ。

 実際に「Rez Infinite – Synesthesion Suit」をプレイしてみると、筆者の全感覚は驚くほどスムーズにその世界を受け入れた。何の違和感もなく、その世界に没入していったのだ。ゲームは2001年頃のそれと変わりないが、爽快感がまったく違う。スーツの振動は伝わっているのだが、それがどういう意味でどう動いているのかは頭に入ってこない。ただ、ひたすらに映像と音の世界への疾走を続けてしまう。

 映像が音となる。ゲームプレイが楽曲の展開へとつながる、VRの世界構造が音楽構造へと変容する。バイブレーターはプレイヤーの何を後押ししてくれるのかはわからない。いずれにせよ、このゲームの世界は、ゲームでもなく、ミュージックビデオでもなく、新たな芸術的表現の地平を見せてくれるように思う。

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 残念ながらこのスーツは、PlayStation VR版「Rez」ローンチ時に販売が決定しているわけではないが、水口氏は「どうにかしたい」と考えている。Rez Infiniteの次章はすでに計画済みで、Infiniteの最終章にはそれを匂わせる仕掛けが用意されているという。また、まだ公にはできていないが、某キャラクターラインセンスを保有している企業とのコラボも予定されている。

 PlayStaion VRは2016年10月発売予定(http://www.jp.playstation.com/psvr/)。専用グラスは4万4800円と本体よりも高額だが、価格を超越する体験ができるのかもしれない。VRはただの仮想現実ではなく、人間の感覚を拡張する一つの解になる可能性があるからだ。



【関連URL】
・Rez Infinite Revealed for PlayStation VR
http://blog.us.playstation.com/2015/12/05/rez-infinite-revealed-for-playstation-vr/
・水口哲也の仕事とプロフィール、そしてブログ
http://www.mzgc.net?page_id=347&lang=en

蛇足:僕はこう思ったッス
maskin2011009rev.fw セガ時代からVR領域のプロジェクトに関与(厳密には学生時代から研究)してきた水口氏は「VR」についての構えが実に冷静だ。一つ一つの要素を考え抜いた彼ならではの成熟した技術が「Rez Infinite」には投入されているように思う。

彼はセガ以降、Qエンタテインメント(Rezなど開発)など経て、数年前まではゲームを離れ「人のWANTS」をテーマにしたレクチャーなどを展開していた。2014年にはVRコンテンツ開発のプロダクションとして米サンフランシスコに「エンハンス・ゲームス(enchace games)」を設立し、ファンディングも完了している。

VRコンテンツのスタジオ自体は日本が中心になっているとのこと。日本のVRのうねりは世界に届くのか注目される。

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maskin

Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭から国内外のソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを経験。。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、ネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。直近では通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のIT系メディアであるスペインの「Softonic」に参加後、2016年からTechWave第三章として新興メディアの開発を再スタート。国内最大規模のスタートアップ&B2Bイベント「アプリ博」のオーガナイザー。

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