楽天がVoyaginを買収、CEO 高橋理志 氏が描いたグローバルスタートアップの軌跡 【@maskin】

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東京や京都、アジアを中心に地域に通じた専門家が旅をガイドするインバウンド観光者向けトラベルサービス「Voyagin」。

運営のVoyagin Pte.Ltd.(シンガポール)は2015年7月2日、株式の過半数を楽天に売却し、グループ子会社入りを果たすことを明らかにした。また、今回若干の増資も行われる模様だ。

Voyagin(当時「FindJPN (ファインドジャパン)」という名前でスタートし)はデジタルガレージの起業家育成プログラム「OnLab(Open Network Lab)」の第三期に選出されたことがきっかけで生まれ、デジタルガレージグループの投資会社DGインキューベーションから2012年3月に資金を調達。2013年6月にはシンガポール政府から資金調達するなど、当時のスタートアップとしては稀有な国境を越えた活動に注目が集まっていた。


今回の楽天グループ入りは、インバウンド事業およびアジア展開に注力する両社の方向性が合致したこと、また、旅行者に欠かせないホテルなど宿泊施設を軸に双方の事業のシナジー効果が見込める事によるもの。リソースやバックオフィス不足のVoyaginを支援しつつ、社名はそのまま、独立性を維持する形となる。

自分の理想の事業を追い窮地に

Voyagin CEOの高橋理志 氏には自由で革命的なビジネスモデル展開を行いたいという理想があった。

今から6-7年前、まだ日本で話題となる前のAirbnbをホストとして日本で展開。いつも、インバウンド旅行者から「何を食べたらいい」「どこにいけばいい?」と頼られ、かつ数百万の収益を生み出すことができていた。理想的なCtoCモデル。このような感動的な体験を自分のサービスとして提供していきたい、そうした思いは次第に強待っていった。

その後、友人が経営していた「Cyta.jp」(クックパッドが買収)の社員としてスタートアップの成長に寄与。音楽や教養の指導者と受講者をつなぐCtoCの理想像を追求するも、マネタイズを意識せざるを得ない企業としてのありていに疑問を感じる中、「Voyagin」の事業構想が膨らんでいったという。

「実際にVoyaginを創業し、そんな自分の理想を追い求めていき、おもしろくてユニークなトラベル商品を提供していきました。例えば「女子高生の一年を体験できる」とかメディアにも受けるに話題になるようなものです。確かに注目は浴びるのですが、マスに受け入れられるかというとそうではなく、売上につながっていくわけではありませんでした。

事業で収益をあげる意欲が薄かったんです。それなのに、当時はまだスタートアップの数も少ない時代ですから、新しい取り組みを評価してもらい資金調達をさせてもらった。4000万の運営資金も一年半ほどで食いつぶす結果となりました。資金調達をしようにも売上がないわけですから困難で窮地に追いやられました」(CEO 高橋理志 氏)。

グローバル視点から得た機運

そんな中、Voyaginにインド人のスーパースターが入ってきたん。日本で育ち、アメリカのコロンビア大学に留学し、いくつかの起業経験をしているという人物。グローバル視点が前提の彼との話の中で、日本だけをターゲットにせず先行してグローバル展開をすることで、将来のアジア圏のインバウンド観光のマーケットを優位に抑えられると考えるようになる。

その流れの中で、シンガポール政府が外国企業を受け入れているという話に乗り、プレゼンテーションをしたところ、あれよあれよという間にシンガポール政府からの出資の話がまとまる。

「日本にある会社を組み換えてシンガポールに本社を置くなどの膨大な手間が必要でした。実際のプロセスは、シンガポールのベンチャーキャピタルが手がけていますが、コストの3/4をシンガポール政府が負担。政府は利益を追求するのではなく、市場を活性化するのでスピード感が半端じゃない。この話が浮上した2013年はシンガポールの外国企業誘致はまだまだで、いろいろな後押しがあり半年ほどで増資が完了していったのです」(高橋氏)

これを機に、Voyaginは日本インバウンドのみのから、タイ、台湾、香港、ベトナム、インドネシアなどの複数拠点を立ち上げていく。AirBnbのように勝手にガイドやユーザーが市場を開拓するCtoCの理想的成長を狙うもうまくいかず、インドネシア・バリにフォーカスするも、日本のように自社商品が主体ではないため利益率も低く売上も伸び悩んでいた。

「ところが、逆に、日本だけが突出して売上を伸ばしていったんです。それは当初想定していたCtoCではなく、事業者がインバウンド旅行者に向けサービスを売るBtoBでした。

それもそのはずです、2020年のオリンピックに向け、インバウンド施策の追い風が吹きはじめたわけですから。しかも、外国人向けにサービスを展開しているところはない、例えば、相撲のサイトで、英語版からはチケットが購入できなかったりするケースもあるんです。そう考えるとホワイトスペースが大量にある状態だなと。コンビニに例えれば、普通のおにぎり、普通のサンドイッチが陳列されてない状態。

Voyaginは、インバウンド旅行者にフォーカスしたという先行者メリットがある、それに対しインバウンド旅行者向けに事業展開したいという企業が商材を納入してくれるようになった。これがメインストリームで、私が理想と思っていたCtoCはその流れを補間する位置づけ、その形がチームを維持し成長するための形となったのです」(高橋氏)

マーケットは追い風、Voyaginにとって飛躍のチャンス

楽天による買収の話が進みはじめたのがおよそ半年前、その間は売上は倍に成長しているという。

「海外からの顧客を相手に、インバウンドで商品を売る。そんな未知の領域にノウハウはなく、誰もが悩むところです。例えば、国内であればソーシャルメディアなどでバズをつくり、継続的に顧客との接点づくりをする手法もありますが、インバウンドの顧客は旅行が終われば元の生活圏に戻ってしまいます。ですから、Voyaginはブランディングも抜き、顧客が「(日本に旅行に)行く」と決めた時、欲しい情報と商品&サービスがある状態にすることが重要なんです」(高橋氏)

Voyaginの戦略は、SEOのそれに乗った効率的なものだ。商材の多くはガイドや事業者が「こういったツアーをやりたい」という情報を投稿してくれる形。とりあえず出すことができるため、その反応をみながら何が必要で、何が需要があるかを把握することができる。すべてがオリジナルコンテンツで、唯一無二を維持することがVoyaginの価値を高めている。

「アジア圏はいずれ収益が上がると考えられるでしょう。しかし、まずは日本の追い風を確実にキャッチする点が重要です」。

楽天はインバウンドにフォーカス。アジア展開で成長することを強く意識しており、先日も公募増資で1880億円を調達するという発表があったばかりだ。資本を拡充しすることで、VoyaginのようにM&Aを活用した成長戦略に備えるという考えだという。

その先鋒にいるVoyaginの今後に目が話せなくなりそうだ。

Voyajin の経緯
2011年 6月 Open Network Lab 3期に選出
2012年 3月 Onlab卒業後、DGIほかから資金調達
2013年 6月 シンガポール法人設立
2014年 3月 シンガポールで資金調達
2015年 7月 楽天グループ傘下に



【関連URL】
・Unique activities, best things to do, offbeat tours in Asia | Voyagin
https://www.govoyagin.com/


蛇足:僕はこう思ったッス
maskin2011009rev.fw オフィスに応接室がなくて社外ミーティングはいつも外のミーティングスペース。「社内ミーティングはいつもベランダでした。冬は大変でした」というVoyajin。アドバンステクノロジーでどん、というモデルと思いきや、電話サポートなどに注力して本当のおもてなしを世界に展開しているのにワクワクさせられます。
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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭から国内外のソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、ネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。直近では通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のIT系メディアであるスペインの「Softonic」に参加後、2016年からTechWave第三章として新興メディアの開発を再スタート。国内最大規模のスタートアップ&B2Bイベント「アプリ博」のオーガナイザー。
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