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株式会社ループス・コミュニケーションズの斉藤徹さんが詳しいレポートをあげてくれた。またこのページの一番下に独断と偏見に満ちた僕の解説がありますので、そちらもお忘れなく。【湯川鶴章】
株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役
斉藤 徹
新トレンド,フラッシュ・マーケティングの雄として全世界から注目されているのがGrouponだ。
創業2年で売上300億円,利益40 億円超という驚異的なレコードで快進撃をつづけている共同購入サービス(海外ではデイリーディール・サービスと呼ばれ始めている)ベンチャーだ。 Grouponがどのようなサービスを提供し,なぜ彼らが急成長を続けているのか,興味のある方はぜひ記事に目を通してほしい。
【参考記事】
・ 創業2年で売上300億円超,利益40億円超。ソーシャルコマース”Groupon” 成功の秘密 (5/6)
・ Groupon CEO,創業から今後の戦略までを語る – インタビュー記事 (5/14)
当然のごとく,彼らのビジネスモデルを真似たGroupon-Likeサービスも雨後の竹の子の如く,全世界で増殖している。さらにそれら類似サービスのデイリー・ディールを集約したアグリゲーション・サービス Yipit まで登場している。
このYipitブログに,Groupon-Likeサービスに関する情報が集約されていたのでご紹介したい。
■ 全米のGroupon-Likeサービス
まず全米でどのくらいGroupon-Likeサービスが広まっているか,その実態がグラフにされている。
これによると,デイリーディール・サービスの総数は,2010年3月の時点で176サイトに上り,しかもさらに増え続けていることがわかる。そしてそれを都市別にしたのが下の図だ。
その中で主要なサービスをピックアップしたものが次の表だ。
リーディング企業としてGroupon,LivingSocial,Buy With Meの三社が,チャレンジャー企業として急成長しているDealOn,HomeRun,kgb deals,TIPPRが ピックアップされ,2010年3月時点の月次ユニーク訪問者,月次成長率,対応都市数,平均取引価格,出資企業が記載されている。特にで月次成長が驚異的 だ。リーディング企業のGrouponで47%,他の企業はすべてそれらを上回り,前月比2倍以上の成長を遂げている企業が3社もある。
またここ半年の月次ユニーク訪問者数の推移(対象は米国のみ)をグラフ化すると次のようになる。
【チャレンジャー企業の月次ユニーク訪問者数推移】
■ デイリーディール・サービスの成長指標
またYipitブログ内に,デイリーディール・サービスの成長指標が記載されていたので,参考までご紹介したい。
・ARPS (Anual Revenue Per Subscriber): 会員あたり年間売上高(取扱高ではない)
ARPS = 平均取引価格×平均コミッション率×年間取引件数×平均成約率×(1-年間解約率)
・Max CPA(Cost Per Acquisition): 会員獲得コストの上限
Max CPA = ARPS / (1 – バイラル係数)
ここで バイラル係数 = 既存会員紹介から入会した新規会員数 / 既存会員数
こ のバイラル係数をいかに高めるかがあらゆるソーシャル系サービスの課題となる。デイリーディール・サービスにおいても同様だ。共同購入という性格上,友人 を招待すればするほど自分にとってプラスになる(購入価格が低下する,ないし購入可能性が高まる)特性があるため,いかにこのインセンティブをいかに効率 的に活用するかが工夫のポイントだ。
特に注目されているのが「加速取引」と言われる手法だ。チャレンジャーの中でもTipper等が取り入れているもので,購入者が増えるほどお得になるサービスだ。この点については別途ブログで記載したい。
さらに詳細な情報はこちらのページへどうぞ。
・ Rapidly Growing Daily Deal Challengers « Yipit Blog
■ 日本のGroupon-Likeサービスについて
日 本においても類似サービスが増加している。主要なところを紹介しておこう。()内は提供会社で,並びは開始された順番。日本発のサービスはPikuで開始 時期は2010年5月だ。それ以降約2ヶ月で6サービスほどが立ち上がったようだ。黎明期だが,今後の激戦が予想される。
・ Piku (ピクメディア)
日本発の日替わりクーポンサイトで日本全域の主要都市をカバー。ピクちゃんというキャラクタを強調
・ KAUPON (キラメックス)
首都圏(東京,神奈川,埼玉,千葉)のみをカバー。コミュニティがあり情報交換できるのが特徴
・ Qpon (ネットプライス&デジタルガレージ)
共同購入サイトとして老舗のネットプライス運営する本格的なサービス
・ ミナワリ (ソラド)
首都圏(東京,神奈川,埼玉,千葉)のみをカバー
・ iCoupons.jp (オープンルームドットインフォ)
まだ本格スタートしていない。ポイント制があるのが特徴のようだ
・ みんクー (ベンチャーバンク)
首都圏(東京,神奈川,埼玉,千葉)のみカバー。自社運営であるホットヨガのクーポンが人気のようだ
【ビジネスのヒント】
・ Amazonの賢いビジネスモデル ~ ローテクで稼ぎ,ハイテクに挑む (5/8)
・ 創業2年で売上300億円超,利益40億円超。ソーシャルコマース”Groupon” 成功の秘密 (5/6)
・ Evernoteが絶好調!ユーザー数は300万人突破,有料会員率は2% (5/4)
・ ループスのB2Bフリーミアム・モデル ~ 自社ソーシャルメディア活用とその効果を公開 (3/31)
・ 名著「フリー」に学ぶ,無料からお金を生み出す具体的な戦略とは? (11/23)
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【自薦記事】
・ 「ソーシャルグラフ」ってなんだろう? – その意味やビジネス価値,争奪戦まで総まとめ (6/21)
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・ 米国ザッポス「顧客にWOW!をお届けする」奇跡の経営,その本質を探る (12/5)
著者プロフィール:斉藤 徹 (さいとう とおる)
株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役
2005年が創業。国内での企業向けSNS構築分野でトップシェアです。
(ミック経済研究所,アイティーアール社 2008年調査にて)
現在は,企業コミュニティを単体で捉えるのではなく,多様なソーシャルメディアと有機的に結びつけ「クチコミ動線」を設計・構築・運用するコンサルティング・ファームとしての色合いを強めています。
書籍・コラム・ブログは個人活動ですが,ビジョンとノウハウは,ループス社員一同で共有しています。創業テーマである Socialmedia Dynamics を見つめながら,ソーシャルメディアやクラウドソーシングの分野で高い専門性を磨き続けたいと日々励んでいます。(といっても全く堅い人間ではないです。 特に夜は柔らか過ぎと定評です)
Twitterアカウント toru_saito
ブログへのご意見やご質問その他,お気軽にコンタクトください。
こうした仕組みが成立するようになったのもリアルタイム性が強く比較的気軽に情報発信できるソーシャルメディアが普及してきたからだろう。特にTwitterの普及で「本日限りのセール情報!」が口コミであっと言う間に広がるようになったということが大きいのだと思う。
さて日本でも類似サービスが続々と出ている。斉藤さんのリストには入っていないが、Infinity Venture Summit(IVS)の運営者が支援するQ:pod(クーポッド)というサービスもあるし、リクルートも7月15日に新サービスを発表するもようだ。
乱立状態の業者間で今後熾烈な競争が展開されるのか、それとも共存共栄できるのか。
僕はこうしたフラッシュマーケティングの市場はまだまだ拡大するので、しばらくは共存共栄が続くと思う。ただ市場が飽和状態になれば当然シェア争いが始まり、合従連衡が始まる。そこで勝敗を決めるのは営業力なんだと思う。事業者との交渉で、どれだけ高い値引き率を引き出せるかに勝負がかかっているように思う。
さてでは当面は、どのような感じでフラッシュマーケティングの市場拡大が期待できるのだろうか。フラッシュマーケティング成立の背景にあるTwitterは日本でのアクティブユーザーが1000万人を超え、日本のインターネットユーザーのキャズムを超えたといわれる。しかし問題は、こうしたセール情報にもっとも敏感だと思われる主婦層に、Twitterがまだそれほど浸透していないことだ。主婦層にTwitterが広がらない限り、フラッシュマーケティング市場の拡大も期待できないと思う。
ただ反対に、こうしたサービスが引き金になってTwitterを始める主婦が増える可能性がある。今までのセール情報は拡散せずに自分だけが知っているほうが有利だった。情報が拡散すると売り切れになってしまう恐れがあるからだ。一方でフラッシュマーケティングのセール情報は拡散するほうが有利。規定の人数が揃わなければ、高い割引率が成立しないからだ。フラッシュマーケティングのサイトでも、すぐにTwitterで口コミ情報を流せるようにデザインされているところが多い。フラッシュマーケティングを利用するためにTwitter利用が広がり、Twitter利用が広がることでフラッシュマーケティングの市場が拡大する。この正のスパイラルに入ることができるのかどうかがカギだと思う。
そしてもし正のスパイラルに入り、主婦層にTwitterが広まれば、日本のウェブはリアルタイムウェブに進化する。ウェブサービスの多くは、今とはかなりに違ったものに進化しなければならなくなるだろう。
このフラッシュマーケティングが日本のウェブ自体を変える可能性があるのではないか。そんなふうに考えている。【湯川鶴章】
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