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さてTwitterを見ていると蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義【水谷翔】 : TechWaveという大学生からの寄稿に端を発した論争もそろそろ落ち着いてきたようなので、僕なりの総括をしたい。僕にとっての論点は2つ。1つは、リアルな人間関係(実際に会ったことのある人との関係)がソーシャルメディアの軸(あるいは核、あるいは主要部分)なのか。もう1つは、21世紀になって思春期を迎えたデジタルネイティブと呼ばれる年齢層が、ネットに古くから慣れ親しんでいるオールドタイマーと違ったネット体験をし、違った感じ方をしているのか、という点だ。
ソーシャルメディアは、リアルな人間関係が軸であるべきなのかどうかは、以前からウェブ業界で論争になっている。ウェブ業界の経営者が集まるカンファレンスInfinity Venture Summit(IVS)で2年前にミクシィの原田明典副社長が「日本でSNSはうちだけ」と発言し、グリーの田中良和氏やモバゲータウンの守安功氏などから反発を受けた。今年春のIVSでもミクシィの笠原健治社長が同様の発言をしており、そのことについて直接話を聞いてみた。(「われわれの定義では日本でSNSはうちだけ」=ミクシィ笠原氏【湯川】 : TechWaveという記事にインタービュー動画あり。関心のある方はどうぞ)
ミクシィの笠原氏、原田氏の主張は、Greeやモバゲータウンは、ゲームを通じて知り合った人間関係が混じっているが、mixiは実際の友人がつながっているコミュニティーで、別のものとしてとらえるべきだ、ということだ。
Facebookの米国ユーザーのブログなどを読んでいると、大学の友人などのリアルな友人関係と、ゲームの中で知り合ったバーチャルな人間関係の両方があるのに、Facebookが自分がどこで何をしたかという情報さえもゲームの中で知り合った人にまで通知するのは困る、という意見があった。ミクシィの両氏が言うように、リアル、バーチャルの2つの人間関係を混ぜるといろいろ不都合が起こりそうだ。
ただ現時点で多くの人が、リアルの人間関係とバーチャルの人間関係の両方をソーシャルメディアの中に持っているというのは事実。実際に会った人とソーシャルメディア上でその後も親交を深めたり、ソーシャルメディアで知り合った人と「実際に会ってみましょう」ということになったり。佐々木俊尚氏が、リアルとバーチャルの両方の人間関係が融解しつつある、というのはその通りだ。人によっては、ソーシャルメディア上の友達のリストには実際に会った人のほうが多い場合もあるだろうし、最初はネット上で知り合ったと友人のほうが多いという場合もあるだろう。軸はリアルでもバーチャルでもいい、という佐々木氏の主張はその通りだ。
ではなぜミクシィの笠原氏、原田氏、それに寄稿してくれた大学生の水谷翔くんは、そこまでリアルにこだわるのか。リアルじゃないといけない、と主張するのか。