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「ついつい頑張り過ぎちゃうんですよねー」。LINEの仕掛け人である、NHN Japanのウェブサービス本部 執行役員/CSMO 舛田淳氏は人気の “スタンプ” ぬいぐるみを抱えて笑う。
世界で4000万超のユーザーを抱え、現在も成長を続けるLINEには誤解も多い。
たとえば、多くの人が人気のきっかけと思っているスタンプ。もともと同種のモデルは存在したし、キャラクターも社員のデザイナーが描画したもの。「LINEユーザー同士のたわいもないやりとりを助長する、非言語のコミュニケーションのきっかけになる」と舛田氏は考えていたが「正直ここまで人気になるとは思っていなかった」と話しているのは事実。
ぬいぐるみは限定300個で試しに作成したもの、“試しに” という以上に豪華で、ファンらは限定販売に朝から行列を作る事件に発展。「世界中から、なんで日本だけなんだと、お叱りを受けました」(舛田氏)とガチャなどの新展開を準備している状態だ。しかしそれでもLINE成長の原動力とはいえないのが本当のところ。
そんな「LINE」は6月23日で一周年を迎える。スタート当初から可能性を見い出し追いかけてきたTechWaveとして、数ヶ月の成長の軌跡を改めて振り返り、LINEの未来について触れていきたい。
仮説が通用しない未知の領域、突破口は?
「LINE」のチームは、スタンプなどが投入された2011年10月の時点でもまだ10名以下。韓国に本社があるNHNグループ初の世界展開アプリになってはいたものの、想定外の事ばかり発生することから舛田氏は「スマホやPCのシェア調査などもやめました」という。
「LINEがどうしてノンプロモーションで成長するのか。どうして世界で普及するのか、調査して究明しようとしていましたが止めました。前例がないんです、仮説が通用しない全くの未知の領域へ突入しているんです。ツールはいつか飽きられる。だから、私たちがダメといったらダメになるだろうし、次の展開がなくてもダメになる。だから、ずっと期待を裏切り続けていきたい。」(舛田氏)。
先が見えない。このような中、数名だったプロジェクトチームは今やコアメンバーが80名に届く規模にまで成長。そもそも「LINE」は “企画書” で生まれ育ったものではないから、この状況を突破する力があったのかもしれない。
LINEチームの最大の特徴は「デザイン」から入っているということ。まずユーザーが触れるモノから徹底的に検証し、納得のいくプロダクトとして成立すると判断してから作る。マーケット観は共有していたとは思うが、そもそも “紙よりもチームがイメージを共有し現実を見据えられるものを” というスタンスだった。
紙の世界で生きている人にとっては意外かもしれないが、いつも持ち運び指でタッチするというスマートフォンは、企業と消費者とを強烈に結びつける接点であり、そこから企画を膨らませるというのは現実的な形と言える。筆者がLINEの成長を予見した一因でもある。
また、LINEチームは、メッセージを1点に集約していた点に強みがあった。舛田氏いわく「一晩中電話したりチャットする人を対象としたサービス」。要するに「近しい仲間の対話手段」である。細かい要件としてログインなし、課金なし、メールのような作法なしといった要素がいくつもあり、それらを集約することで世界で、国や地域に関係のないコミュニケーションプラットフォームとして要件が整うことになっていた。
2011年末から年始にかけ放映されたTV CMもそのメッセージから離れていない。「夜中に泣いてる友達の話を聞く」ようなケース。最も心に響くタレントとしてベッキーが出演。社名NAVERなどは見えるか見えないかというサイズ。iPhoneやらAndroid、携帯やらの使用条件すら一言も登場しない。
「CMも、LINEと同じように、目て見たものをその場で何度も修正しながら短期間で作り上げました。要素を追加するのではなく、削りまくって、伝えたい1点を表現する。だから制作コストも押さえられ、パフォーマンスも見えやるくなるんです」(舛田氏)。
深夜と土日にしか放送しなかったというが、鮮明に記憶に残っている人が多いのではないだろう。ベッキーのCMは非常に良いパフォーマンスを発揮。まったく同じプロットでタレントを変えた台湾版も結果を生み、今後は同じプロットで世界展開も計画中だ。このCMの成果は、友達招待機能がかなりの確率で使用されていったことにあるという。
これについて舛田氏は興味深い発言をしている。
「ソーシャルグラフは、サービスで作るものではなく、既に現実世界にあるものを活用する」。
GPSなどの技術依存ではなく、リアルに触れるユーザーを見てサービスを拡充していく。そうすることで、ピンポイントで次の展開を考えていくことができるようになる。
「例えば、2012年4月13日から順次公開していったLINE Cameraですが、ノンプロモーションで月500万ダウンロードを達成しました。スタンプストアなどは、サービスメニューの階層の奥でありながら、非常に大きな売上を上げることができました。タレントさんの公式アカウントについても、例えばベッキーは3週間で100万登録を獲得しています。過去、同種の公式アカウント登録展開では半年で60万件程度しか出なかったため、この数値は画期的。スタンプスタンプもキャラクター権利保持者にとっては、ダウンロードされるだけでなく使ってもらえるので評価が高いんです」(舛田氏)
しかし、舛田氏は、現時点は「まだ1stステージ」と言う。「ユーザー数が多いから何でもできるという話ではないんです。しきい値を設け、それにチャレンジしている状態で、もっとパフォーマンスを上げなければ年内目標の1億ユーザーはもちろん、8億9億というFacebookが抱える領域に到達するのはより困難になってきてしまいます」。
これだけのユーザー数を抱え、実際にマネタイズも好調でも、まだまだ検証段階というLINE。チームの中では「コミュニケーションツール」というしばりは解放済みで「No1」を目指す体制。「2ndステージへのチャレンジを続けていきます」(舛田氏)というのだから楽しみだ。
(続く)
LINE成長の歴史
・2011年3月11日 震災で役員は九州へ、社員は自宅待機
・2011年4月に企画スタート、デザインから詰めていく。コンセプトには311の絆が影響
・2011年6月23日サービスイン、「ほとんどの人がピンときてない」状態
・2011年7月15日 NHN Groupとして初の日本初の世界展開アプリに
・ 2011年9月末 100万ユーザー、女性7割。日本以外の国、中東、韓国、アメリカ、アジア、欧米圏でダウンロード数が急増している状態。
・2011年10月4日、3Gでも使用できる無料通話機能リリース、スタンプ機能もこの際実装。プラットフォーム化を明言。
・2011年10月14日、200万ダウンロード突破
・2011年10月17日、300万ダウンロードを達成した
・2011年10月19日、まさかのiPhone版のダウンロード停止
・2011年11月1日、iPhone版App Storeでの公開再開
・2011年11月8日、500万ダウンロードを達成(世界108か国に利用者)
・2011年1月1日、 NHN Group合併
・ 2012年1月17日、1500万ダウンロード
・2012年3月5日、2000万ダウンロード
・2012年3月7日、PC版とタブレット版がリリース
・2012年3月27日、2500万登録ユーザー突破(ダウンロードという表現から登録ユーザーという表現方法が変更されている。フィーチャーフォンも増加(全体の5%)しているため)。
・2012年4月18日、3000万ユーザー突破
・2012年4月26日、スタンプショップ開設出だし好調
・2012年4月13日、LINE CameraがAndroid版から公開開始
・2012年5月10日、LINE Cameraが500万ダウンロード突破
・2012年6月6日、世界4000万ユーザー突破(国内1800万人)(2012年6月11日更新)
【関連URL】
・TechWave内「LINE」関連記事
http://techwave.jp/tag/line
・LINE(ライン)- グループコミュニケーションサービス
http://line.naver.jp
・App Store – NAVER LINE
http://itunes.apple.com/jp/app/line/id443904275?mt=8
・Android – NAVER LINE
https://market.android.com/details?id=jp.naver.line.android
久し振りのLINE舛田氏インタビュー。ファンでもありずっとウォッチする側として、改めて話を聞くのはなんだか照れる。もう1年が経つのか、と感慨深く感じるが、LINEチームは臆することなく、この巨大マーケット創造に向かっているのに感動すら覚える。
彼らの抱えるメッセージは、より収束されればされるほと強みを持つと思う。スタンプを好きな人は一杯いる。LINEチームはそういう声を大切にすると思うが、スタンプでノンプロ成長はありえなかった。この辺を理解できるかどうかが、IT業界の成長にとても重要な意味を持つ。これらLINEに始まるのか誰も断言できないが、NHN Japanの全リソースやパートナーらと共に2ndステージに向け着実に進化しているようだ。次回は未来について、こうご期待。
8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。TechWaveでは創出支援に注力。エレベーターピッチ絶賛受け付け中! (まずはAirTimeでどうぞ!)